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SERVICE  SCIENTIST’S  JOURNAL  

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サービスモデル

 

​とは

ビジネスモデルは事業者を主語にして「いかに儲けるか」を設計するのに対し、サービスモデルは顧客を主語にして「いかに価値共創するか」を設計したものです。サービスモデルの組み立て次第で、サービスの価値や競争力は大きく変わります。

 サービスモデルの秀逸さで事業を伸ばす

 ”サービスは顧客と一緒につくるもの”という「共創」の考え方が重要です。モノづくりのように、工場で作ったモノを届ける「提供型」では、つくるプロセスに顧客は直接的には関わりません。「良いサービスは喜ばれるに決まってる」と思って、勝手にサービスを作って提供しても、サービス事業はうまくいかないものです。この考え方を心得なければ、サービスの開発や価値向上はうまくいきません。それを具体的にサービスの構成要素に落とし込んだものがサービスモデルといえます。

 ビジネスモデルのトップランナー企業の経営者と話をすると、ビジネスモデルはすぐに真似をされてしまうために優位性にはなりにくくなったと言います。そこで今「サービスモデル」で優位性を高める取り組みを始める企業が増えています。

 ビジネスモデルとサービスモデルの違い

 ビジネスモデルは事業者を主語にして「いかに儲けるか」を明らかにする設計図です。対してサービスモデルは、顧客と事業者の両方を主語にして「いかに価値を共創するか」を示す設計図です。多くの企業では、「ビジネスモデル」は熱心に議論して設計する一方で、「サービスモデル」は現場に丸投げ。ビジネスモデルは良いのが描けたから、あとは現場で頑張って実現してください、と言わんばかりです。サービスモデルを設計して、顧客との価値共創が進まなければ、ビジネスモデルは実現しません。この両者は歯車のようにかみ合っていて、サービスモデルの歯車を駆動することで、ビジネスモデルの歯車を駆動させるのです。

サービスモデルの全体像

 

ここではサービスモデルの全体像を紹介します。価値共創サービスモデルには、大きく3つの領域があります。まずはこの3領域について、ざっくり捉えてみましょう。

 

  • 顧客接点(図の右側):顧客と一緒に価値を生み出すための要素T1~T3によって「価値共創サイクル」を回します。

 

  • 事業組織内(図の左側):サービスをブラッシュアップするための要素T4~T6によって「進化共創サイクル」を回します。

 

  • 企業経営(図の下段):上記2つ(顧客接点と事業組織内)のサイクルを回し続けるための意思決定と投資に関する要素T7によって、事業成長サイクルを回します。

価値共創のサービスモデルとは、この3つの領域(顧客接点・事業組織内・企業経営)において、「価値共創サイクル」「サービス進化サイクル」「事業成長サイクル」の3つが連動して回り続けることで、継続的にサービスイノベーションに取り組めるようになるというものです。そのために、T1~T7のそれぞれの要素を強化するだけでなく、T1~T7が結びついて全体で1つのサイクルとして回すことが非常に重要になるというわけです。

 

 

価値共創サービスモデルのチェックリスト

 

3つの領域におい価値共創やサービスイノベーションに取り組むためのチェックリストになるような問いを、私なりの目線で取り上げます。自社のサービス事業や価値共創活動に当てはめてみてください。※T1~T7までの各要素の詳しい説明は、書籍に譲ります。

 

顧客接点で価値共創サイクルを回す

☑ T1:価値提案…どの事前期待に向けて価値を提案するのかが明確になっているか?

  (解説)サービスの価値は事前期待によってガラリと変わります。顧客の様々な事前期待の中から、どの事前期待を的にして価値提案を行うのかを、しっかりと設定することが重要です。

詳しくは、「サービスの定義」を参照

☑ T2:利用価値共創…顧客の事前期待に応え、顧客と一緒になって価値を生み出すためのプロセスが設計できているか?

(解説)価値共創のプロセスを個人や現場のセンスに頼り切るのではなく、組織的に価値共創に取り組むために、付加価値型のサービス設計を明確にすることが有効です。

詳しくは「サービスプロセスをモデル化する」を参照

☑ T3:満足評価からの事前期待形成…顧客が次の事前期待を形成するための取り組みができているか?

  (解説)顧客満足の評価をしておしまいでは、価値共創サイクルは持続しません。サービスの利用経験を通して、事前期待が成長・進化したり、真の事前期待が喚起されるような働きかけが必要です。

詳しくは「共創とは」を参照

 

事業組織内でサービス進化サイクルを回す

☑ T4:価値発信(顧客からのフィードバック)把握…顧客評価やVOCに優先度を付けて分析や活用ができているか?

  (解説)顧客からのフィードバックすべてに闇雲に対応すると、サービスの同質化が進み、他社と同じサービスになってしまいます。どの事前期待の顧客が、どんなフィードバックをくれたのかを把握することで、対応の仕方や優先度などを的確に定めることができます。

詳しくは「成果への分岐点」を参照)​

☑ T5・T6:提供価値共創…顧客接点で得られた気付きをもって、サービス設計を進化させる取組みができているか?

  (解説)サービスの現場では様々な知恵や工夫がされているが、それが可視化されておらず、サービスの進化に活かせていないことが多い。現場の暗黙知を組織の形式知にして、サービス設計に組み込むことで、サービスの進化は加速します。

詳しくは「リ・プロデュース」を参照

企業経営として事業成長サイクルを回す

☑ T7:付加価値共創…顧客との価値共創と、それを受けてのサービス進化の両サイクルを強力に回し続けるための意志決定ができているか?

  (解説)目の前の売上や利益の確保を最優先にするのではなく、価値共創サイクルを加速し、事業成長や成果の手前のメカニズムに対して投資を意思決定することが重要です。サービス開発や人財育成、カスタマーサクセスなど、手間やコストがかかる価値共創のしくみが、どのように事業の成長シナリオに結びつくのかを見据えた意思決定をしたいものです。

​(詳しくは「ESが先CSは後、問題」を参照

いかがでしょうか。価値共創サービスモデルのそれぞれの領域や要素に対して、1つずつ問いを立てています。実際には他にも様々な目線からの問いがありますが、まず私が普段、様々な企業の方とサービス改革やサービスイノベーションに取り組む際に、よく議論してる観点で、問いをピックアップしてみました。皆さんの事業の課題や伸びしろが少しでも見いだしてみてください。

 自社のサービスモデルを自覚する & 他社のサービスモデルをひも解く

 これまで「サービスモデル」の観点で自社の事業や、他社の事例を分析していない企業は多いと思います。是非一度、やってみてください。おそらく、現状の盲点や伸びしろが明確になるのではと思います。あるいは、他社の事例をサービスモデルの観点でひも解いてみてください。これを「サービスモデルマーケティング」と呼んでいます。これにより、業種や業界の枠を越えて、これまで以上に深い学びや洞察が得られるのではと思います。

詳しくは「サービスモデルマーケティング」を参照

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サービスを科学する理論や手法の実践理解を深めたい方は公開セミナーもご活用ください

 

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