SERVICE SCIENTIST’S JOURNAL

リ
・
プロデュース
ここまで育ててきたサービスの価値を、組織で精度よく再現できるようになるために、リ・プロデュースしましょう。リ・プロデュースを重ねれば、価値向上や進化の足掛かりになります。継続が力になります。
継続は力になっているのか?
「サービスの科学」の活用が広がったことで、見えてきたことがあります。「継続は力なり」という言葉がありますよね。サービスやCSに関する取り組みは、「もう長く継続しています」という会社が多くあります。その継続は、力になっていますか?継続すれば自動的に力になるのではありません。実際に、「長年続けているけれど成果が出なくてマンネリ化している」とか、「同じような活動が、何度も立ち上がっては消えていく」という悩みをよく伺います。力になるように継続している会社と、継続しているだけの会社の差は、時間と共に広がっていきます。継続を力に変えるのがうまい会社がやっているのが、「リ・プロデュース」です。文字通り、サービスやCSを「もう一回」プロデュースすることです。
成長の足掛かりは「リ・プロデュース」
1回目のプロデュースは、サービスを開発したときや、CSの活動を立ち上げたときのことです。この時には、事業シナリオやビジネスモデル、そしてサービスモデルを、時間をかけて丁寧に設計したはずです。そして実際に立ち上がってから今日まで、皆さんの知恵と工夫でサービスの価値を育ててきました。失点が随分減って、顧客は高い評価をしてくれるようになってきたのではないでしょうか。今、皆さんのサービスは、顧客にとってどんな価値があるのでしょうか?それをどうやって生み出しているのでしょうか?それをモデル化できれば、価値を生みだす精度が向上します。組織での再現性も向上します。こうしてレベルの高いところで価値が安定すれば、それを「足掛かり」にじて、さらなる成長や進化への挑戦を上乗せできるでしょう。その挑戦で得た経験知をモデル化すれば、新たな「足掛かり」になります。これを繰り返すことで、着実に成長の階段を登っていける。まさに「継続が力になる」わけです。
逆にリ・プロデュースができなければ、個人の経験値が高まっても、組織的なサービスレベル向上は限定的でしょう。結局、各自の経験とセンスでできる範囲が、価値向上や進化の「限界ライン」になってしまいます。これまで育て上げてきたサービスやCSを次のステージに押し上げるために、皆さん自身の手でサービスをリ・プロデュース(もう一回、プロデュース)するのです。
サービス・リ・プロデュースというスキル
「サービス・リ・プロデューサー」の育成も始まっています。実際のネーミングは各社で工夫されていて、私と同じ「サービス・サイエンティスト」であったり、「バリュー・コ・クリエイター」としている企業もあります。実際の役割は、当連載で取り上げてきたサービスとCSの理論と手法を習得して、自社サービスをモデル化しながら価値向上や進化をガイドするスキルを持つ、まさにリ・プロデュースを担う人材です。サービスの人材育成は、「若手向け」ばかり充実しています。もちろん、サービスの本質を若いうちから理解しておけば、育成と活躍が加速します。この育成と活躍の加速は、ベテランやマネジメント人材にも必要です。「リ・プロデュース」のスキルは、ベテランやハイパフォーマー、マネジメント人材が身に付ければ、これまで培ってきた豊富な経験知をモデル化して、自身のパフォーマンス精度を高めるだけでなく、それを皆で実践すれば組織的なサービスレベルは向上します。部下や後輩に対して「経験を積みなさい」ではない育成の加速もできるでしょう。このように、自身の経験知を組織の力に変え、事業成長にもっと活かせるようになります。同時に、これまで経験やセンスでやってきたことがモデル化でき、組織的な価値が安定すれば、ベテランやマネジメント人材自身も「次のチャレンジ」にステージアップできるようになります。事業も人材も伸ばす、サービス・リ・プロデュースをリスキリングするのです。