SERVICE SCIENTIST’S JOURNAL
顧客不在の壁
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事前期待の的
良かれと思ってしたことなのに顧客に響かない。顧客不在の壁にぶつかる原因は何か。そして、それをどうやって乗り越えるのでしょうか。
良いサービスをつくっても喜ばれない
サービスで顧客に価値を届けることは、案外難しいものです。ものづくりとちがい、サービスは目に見えないので、サービスをつくったり、磨いたりするにはどうしたら良いのかと悩んでしまうのです。
ものづくりでは多くの場合、工場の中で製品をつくるので、顧客は直接的には生産に関わりません。対してサービスは顧客と一緒につくるものだという極めて重要な特徴があります。しかし、多くのサービスは、ものづくり的な価値観でつくられてしまっています。「いいサービスは喜ばれるに決まっている」と思い込んで、勝手につくったサービスを一方的に顧客に押しつけてしまっているのです。
これが「顧客不在の壁」です。
顧客不在でつくられたサービスでは、余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と言われてしまいます。何をやっても顧客に響かないのは当然です。
顧客不在になる原因
サービスの定義の最大のポイントは、顧客に提供することすべてがサービスなのではなく、その中で事前期待に合っていることだけが「サービス」だということです。
いくら良かれと思ってしたことであっても、事前期待に合っていなければサービスとは呼ばれません。余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と言われてしまうのです。サービスの議論をするとき、「何をしたら良いのか」「どんなサービスを開発したら良いのか」「どうやって売ろうか」と、つい打ち手を探してしまいます。しかしそもそも事前期待を捉えていなければ、打ち手が空振りしてしまいます。
これが「顧客不在」になる原因というわけです。
事前期待の的を見定める
顧客不在の壁を乗り越えるには、サービス設計の原点である「事前期待の的」を定義しなければなりません。どんな事前期待を的に見定めるのかによって、サービスの姿やその価値がガラリと変わります。当たり前な事前期待に一生懸命応えても、当り前サービスでしかありません。価値ある事前期待を的に見定めることで、組織的にサービスの価値を格段に高められるようになります。
事前期待を4種類「共通的な事前期待」、「個別的な事前期待」、「状況で変化する事前期待」、「潜在的な事前期待」に分けて整理してみると、事前期待への理解が深まります。
加えて、価値ある事前期待を見つけるために、階層構造を深掘りしたり、価値ある事前期待のキーワード「人生観や価値観に触れる事前期待」や「諦めている事前期待」などを糸口に、事前期待の議論を深めることも有効です。
事前期待の的を中心に据えてサービス改革を組み立てることで、顧客不在の壁を乗り越えるのです。