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SERVICE  SCIENTIST’S  JOURNAL  

サブスクリプションの本質.png

サブスク
リプション

本質

Q.サブスクリプションサービスに取り組む際、その成功と失敗を分けるポイントはどこにあるのか知りたい。

 「サブスクって、どう捉えていますか?」こんな質問を頂きました。最近、「〇〇サブスク」というサービスを目にする機会が増えました。社内でも「サブスク」の議論をしているけれど、「顧客を囲い込む」なんて言葉が飛び交い、論点がズレているのではとモヤモヤしているというのです。

 今、多くの企業がサブスクリプション型サービスの開発や展開に熱心に取り組んでいますが、“契約しやすく・解約しにくい”顧客不在の残念なサブスクも散見されます。当然ながら、何でもかんでも定額制にしたらうまくいくわけではありません。サブスクリプション型サービスの成功確率を高めるためのサービス設計はできているでしょうか。サブスクは、いったい顧客に何を約束するサービスモデルなのでしょうか。

 

 

サブスクで顧客は囲い込めない

 

“サブスクリプション”の詳しい説明は割愛しますが、簡単に言えば、モノを購入するのではなく、定額料金を支払い利用する権利を得るサービスのことです。これは顧客にとってみれば、定額制のため安価に利用を開始できて、必要なときにサービスを利用できるメリットがあります。もちろん、モノを購入しない(手元にモノが残らない)ために解約したら機能を利用できなくなったり、全く使わない期間があっても定額料金を支払い続けなければならなかったりと、デメリットもありますが。

 

 このサブスクリプションを“顧客の囲い込み手法”だと思い込んで、サービスを開発・運営している企業は意外に多いようです。「囲い込まれたい!」と思っている顧客なんているのかどうかを考えれば、この提供者都合の考え方でサブスクリプションを捉えても、うまくいかないのは当然の結果と言えます。価値あるサービスを設計するには、“サブスクリプション”の本質を捉えておきたいものです。それはつまり、次の問いへの答えをしっかり持つということです。

『サブスクリプションは、いったい顧客に何を約束するサービスモデルなのか?』

お得に何かが使いたい放題になったり、定期的に何かを届けることを約束しているのでしょうか。

 

 

サブスクリプションが顧客に約束すること

 

 サブスクリプションは、「顧客の事前期待に応え続けること」を約束するサービスモデルだと捉えるべきです。サブスクリプションサービスが打ち出している、何かが使い放題・食べ放題になることや、定期的にステキな何かが届くことなどは、あくまでも事前期待に応えるための手段であって、そのサービスの価値の本質ではないのです。これまでに何度も触れていますが、サービスの価値は「どういう事前期待に応えるか」によって、ガラリと変わります。これを“事前期待の的“と呼んでいますが、サブスクリプションにおいても、この観点が抜けがちです。サブスクリプションサービスを設計しようと思ったら、まずは「どういう事前期待に応え続けること」を価値とするのか、自社のサブスクリプションサービス特有の事前期待の的を見定めることが重要なのです。

(詳しくは「事前期待の的を見定める」を参照)

 

時間軸を組み込んだサービス設計に

 

 ポイントは、事前期待に“応え続ける”ということです。顧客の事前期待は変化します。時間が経つにつれてサービスの利用経験が重なり、満足感が積みあがると、事前期待が膨らんだり、変化したりします。事前期待に応え続けるには、「同じサービス」を続けているだけではいけないのです。顧客に向き合って事前期待の変化に合わせてサービスを改善・向上する取り組みが欠かせません。加えて、膨らみ過ぎた事前期待を適切に冷ますなどの“事前期待のマネジメント”も、顧客と長く良好な関係を続けるために、極めて重要になります。

つまり、サブスクリプションサービスには、価値ある事前期待に応え続けるためのサービス設計の運用と、顧客と向き合うことで事前期待をマネジメントするサイクルが必要なのです。

(詳しくは「事前期待のマネジメント」を参照)

 

 

問われているのはサービス事業のスタンスそのもの

 

 「正直、面倒くさい。」そう思った方もいるのではと思います。

 事業者にとってサブスクリプションとは、継続的な売上が見込めるなどのメリットがあります。しかしここに至るまでに乗り越えなければならない壁があるのです。「継続的な売上」を重視するということは、モノ売りで得られていた“短期的な”売上やスケールを追いかける価値観からの脱却が必要です。同時に、「売上を継続する」ためには、顧客と向き合って継続的にサービスを改善・向上する取り組みに注力する覚悟が問われます。モノ売り思考が強い企業ではよく“手離れの良さ”が重視されますが、「手離れの良さは顧客離れの早さ」だと心得なければなりません。顧客と向き合って価値を共創し、顧客とのエンゲージメントを高める取り組みは、手離れの良さを気にしていては務まりません。

 「サブスクリプションで顧客を囲い込もうと思ったら、顧客と向き合い続ける覚悟を問われて逆に追い込まれてしまった。」と苦い経験をしている企業もあります。サブスクリプションの土俵では、事業者として真に顧客と向き合い続け、価値共創を継続していくスタンスが取れるかどうかが問われているのだと思います。

 

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