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SERVICE  SCIENTIST’S  JOURNAL  

第2回受賞サービス一覧.png

第4回
​受賞サービス
一覧

新たな価値を創出したり、社会課題に挑む、DXを組み込んだサービスなど、これからの新時代をつくる日本のサービスイノベーションの最前線事例が表彰されました。

日本最高峰のサービス表彰制度である「日本サービス大賞」の、第4回受賞サービスが2022年12月に発表され、表彰式には岸田内閣総理大臣をはじめ、各省の大臣も出席され、盛会となりました。今回の日本サービス大賞の最大の特色は、応募開始から審査、表彰式に至るまで、コロナ禍の真っただ中で行われたことだと思います。コロナ禍で応募数が減るのではないか、「三密回避」のようなコロナ対応の事例ばかりになるのではないか、そんな予想もありました。しかし、ふたを開けてみれば前回同様に約800件もの応募があり、受賞サービスは社会課題にチャレンジしたり、新しい時代をつくる先進的なサービスモデルがずらりと並びました。加えて、受賞サービスの多くがデジタルテクノロジーを活用しており、DXサービスイノベーションのロールモデルとしても注目したいところです。このように、今回受賞した30のサービスは、前回までに受賞した79件のサービスとは、明らかに顔ぶれが変わり、新たな時代に向かう今だからこそ注目したいサービスモデルの数々です。

  

スタートアップが初のTOP賞を受賞!

 

まず内閣総理大臣賞ですが、これまでは、JR九州のななつぼし、三菱地所の丸の内地域の再構築、コマツのスマートコンストラクションと、大手企業の受賞が続いていました。今回は初めてスタートアップ企業である「エアークローゼット」が、シェアリングによる月額定額制ファッションレンタルサービスで受賞しました。プロのスタイリストが選んだ着こなしを楽しめ、使うほどに自分にあったファッションが楽しめたり、新しいファッションとの出会いが楽しめる価値共創的なサービスモデルになっています。ファッションのサブスクサービスは難しいと言われる中で大きく成長しているエアークローゼット。ビジネスモデルの観点も大切ですが、是非価値共創のサービスモデルの観点で、どのようにして他にはないサービスが実現しているのかを、当コラムでも取り上げたいと思います。また、TOP賞である内閣総理大臣賞をスタートアップが受賞したことで、知名度や規模の大きさではなく、本質的な価値とそれを生み出すサービスモデルの構築という、真のサービスイノベーションを産業界に展開する糸口になるのではと感じました。

 

新たなマーケットを生み出すサービスイノベーション

 

既存のマーケットがダメージを受けたコロナ禍ですが、その一方で新たなマーケットを創出するようなサービスが数多く受賞したことで、これからの時代を創り上げる多くのヒントが得られるのではと思います。

新しいモノの応援購入マーケットプレイス「Makuake」は、新しいモノを生み出そうとする事業者が企画を市場に公開して先行購入してもらってからモノを作るという世界に類を見ない“0次市場”を構築しました。これによって、事業者は売れるか分からないモノを先に作って在庫するというリスクを負わずして新しいモノづくりにチャレンジできます。まさに日本のモノづくりの強みを活かして、もっとワクワクするモノが生まれる産業界に生まれ変わることを目指しています。

他にも、個人のクリエイターが作った楽曲ライセンスのマーケットプレイス「Audiostock」は、岡山県のスタートアップ企業ですが、既に世界最大級のプラットフォームとなっており、クリエイターズエコノミーを象徴するサービスモデルを構築しています。

全国創生を目指した定額住み放題多拠点プラットフォーム「ADDress」は、日本各地の空き家をリノベーションし、全国200箇所以上の物件に定額住み放題できるサービスです。各物件には“家守”(やもり)がおり、交流や地域体験などの価値共創が生み出されています。

「WorldShopping BIZ」は、ECサイトにタグ1行の追加で越境ECの言語、決済、配送をまるごと支援するシンプルかつ革新的なスキームです。特に各国の法令(個人情報保護や税制の法改正)に対応する決済と配送の代行ができることが大きな強みです。これにより、“ウエブインバウンド”という新たなマーケットを生み出しています。

これらのサービスモデルの中には、日本的な要素が強調されているのもが多いのも印象的です。たとえば「モノづくり特化」、「日本の音」、「人によるきめ細い価値共創対応」など。日本的なサービスイノベーションは、ビジネスモデルやプラットフォーム、しくみの構築に、価値共創を促進する要素を組み合わせることの重要性を示しているのではと思います。

 

価値を革新するサービスイノベーション

 

 これまでにない新しいサービスやスタートアップが目立ってはいますが、コロナ禍だからこそ、従来のサービスの価値をガラリと革新したり、大きく進化させたサービスにも、非常に興味深いものがたくさんあります。

 たとえば、保険の概念を超えて新たな価値を生み出す住友生命の「Vitality」。これは、生命保険に“健康増進プログラム”を組み込むことで、日々の運動や健康診断などの健康増進アクションをポイント評価し、獲得ポイントに応じた“保険料の変動”や“特典(リワード)”を得ることができるものです。顧客の健康増進のプロセスを共創することで、従来“リスクに備える”ものであった保険を、“リスクを減らす”行動変容を促すものへと、価値を革新しているサービスです。

他にも、実社会をデータ化する人流ビッグデータのプラットフォーム「Beacon Bank」や、モバイルバッテリーから始める循環型経済インフラ「ChargeSPOT」も、人流データやモバイルバッテリーシェアリングを経済インフラとして構築し、新たな時代に向けてその価値を革新するような取り組みがなされています。

 また、JCSI調査国内長距離交通部門で顧客満足第1位を獲得しているスカイマークの顧客満足度向上の仕組みづくりでは、他社の後追いではなくスカイマークらしいCSとは何か、満足度1位に至るまでにどのような変革ストーリーがあったのか、コロナ禍をどのように捉えて取組みを進めてきたのかなど、非常に興味深いです。

 

 第4回日本サービス大賞の受賞サービスは、まさに新しい時代に向けたサービスイノベーションのロールモデルであるといえます。コロナ禍を耐えしのぐのではなく、進化や革新のチャンスに変えられるかどうか。先の読めない変化の時代(VUCAの時代)に対応するだけでなく、変化を生みだす側にまわることができるかどうか。サービスイノベーションの最前線の受賞事例にヒントを得て、私たちもいよいよ、価値共創のサービスイノベーションに打って出る時が来ているのだと思います。

 

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